人体を再生できる!再生医療の希望

今年も残すところあとわずかとなりました!

驚くべきスピードで進歩するテクノロジーですが、2010年代は医学も目覚ましい進歩を遂げた時代になりました。

今年は大阪大学でiPS細胞によって作られた角膜を移植する世界初の手術が行われ、患者の視力を回復させることに成功しました。

失われた肉体の機能を取り戻すことができる”夢の医療”である再生医療。

今やすでに”夢”ではなく、実用化の段階に入っています。

今回は、近年私たちの身近になってきた再生医療についてご紹介します。

再生医療とは何か?

私たちの体は、ケガや病気により傷付いたり機能が一時的に衰えても、治癒力によって再生することができます。

この治癒力を引き出したり、細胞を培養して移植することで病気やケガを治癒させる医療を”再生医療”と呼びます。

幹細胞による再生医療

幹細胞(stem cell)とは、様々な組織細胞に分化することができる万能細胞のことで、皮膚細胞になったり、臓器を作る細胞になったりすることができます。

最近では、再生医療と言えばこの幹細胞を利用した医療を指します。

幹細胞にはいくつかの種類がありますが、特に有名なものは以下の3つです。

  • 体性幹細胞
  • ES細胞
  • iPS細胞

体性幹細胞

体性幹細胞(Somatic Stem cell)は体内にもともと存在する、限定的な分化能力を持った細胞です。

特に造血幹細胞は古くから知られており、そのほかにも腸管幹細胞など細胞の入れ替わりが早い箇所に多く存在しています。

再生医療の先駆けとなった幹細胞で、現在も研究が進められています。

ES細胞(胚性幹細胞)

ES細胞 (Embryonic Stem cell)受精卵の中に存在する細胞から作られる幹細胞で、遺伝子誘導により様々な細胞組織になることができます。

1990年代には人間のES細胞を作ることにも成功しましたが、作成するために受精卵を使用する必要があることから倫理的な問題があり、ES細胞の作成を認めていない国、条件付きで認めている国があります。

また、欧米ではすでに実用化に向けた治験が進められています。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)

iPS細胞 (induced Pluripotent Stem cell)は2006年に京都大学山中教授の研究チームにより初めて作られた幹細胞で、ES細胞とは異なり、4つの遺伝子を発現させることにより皮膚などの体細胞からでも作成することができます。

幹細胞の中でも実用性、コスト、倫理的な問題などの観点から最も期待されている細胞で、まだ実験レベルではありますが、すでに医療の現場に登場し始めています。

また、iPS細胞は患者自身から採取した細胞から作成できるので、拒絶反応がない移植が可能になります。

再生医療で何ができるのか?

様々な組織になることができる幹細胞ですが、これらを使用した再生医療では一体何ができるのでしょうか?

機能が失われた臓器を再生できる

再生医療に最も期待することと言えば、何と言っても臓器などの”人体再生”でしょう。

2019年現在では、角膜などの比較的単純な組織再生の実用化には成功しており、最終目標である肝臓などの複雑な臓器を作り出すために、豚などの動物の体内で人間の臓器を培養する方法や、”3Dプリンター”を使用して立体的な臓器を作り出す研究が進められています。

病気や障害によって機能が失われた臓器を再生することができれば、人工臓器に頼ったり、一生薬を飲み続けなければならない生活からも解放されるでしょう。

コストと時間の問題

完全に拒絶反応がない臓器を作るためには、患者自身から細胞を採取して培養する必要がありますが、それには莫大なコストと時間がかかってしまいます。

そこで、免疫の適合性が高い遺伝子を持つドナーからあらかじめ細胞を大量生産しておくことでコストダウン時間短縮を行う方法が検討されています。

新薬を効率的に開発できる

幹細胞の技術は新薬の開発時間短縮にも役立てることができます。

例えば、患者の細胞からiPS細胞を作り出して臓器の状態を再現し、病気の原因は何か?どんな薬が効くのか?を効率的に探し出す、ということにも役立てることが可能です。

また、マウスなどで動物実験を行うよりも、より正確に安く治療法を探すことができると考えられます。

アンチエイジング

iPS細胞は老化した細胞からでも作ることができますが、その際に老化を初期化して細胞を若返らせることもできます。

この特性を活かして、皮膚や内臓を常に若い状態に保つことができれば、たとえ高齢者であっても若者とほとんど変わらない見た目身体能力を維持することができるでしょう。

体の組織を再生できるということ自体が、どのような健康食品や化粧品にも勝る究極のアンチエイジングと言えるのです。

少子高齢化社会への福音となるか

私たちに多くの希望を与える再生医療ですが、個人の健康問題だけでなく社会問題の解決にもつながることが期待されています。

現在日本は世界で最も高齢化が進んだ国であり、高齢者の割合増加に伴って医療費など社会保障費が年々増大し、現役世代の負担が大きくなっています。

しかし、再生医療を十分に活用することによって健康寿命を延ばすことができるようになれば、社会保障費を大幅に削減することができるようになるでしょう。

将来は”人生100年時代”が訪れると言われています。

再生医療は、定年後もまだまだ働く意欲のある人を再び現役世代と同じように、貴重な労働力として活躍させる力も秘めているのです。

まとめ

・再生医療とは体の治癒力を引き出したり、細胞を培養して移植したりする医療のこと。

・最近では特に”幹細胞”を利用した再生医療の研究が盛んになっている。

・幹細胞の中で特に有名なのは以下の3つ

  • 体性幹細胞
  • ES細胞
  • iPS細胞

再生医療でできることは、

  • 失われた臓器などの再生
  • 効率的な新薬の開発
  • アンチエイジング

・高齢化による社会保障費の増加に悩む日本を救う可能性を秘めている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です