みなさんは数年前にネットで炎上した年金についての厚生労働省の漫画を覚えていますか?
最近自分の年金ついて考える機会があり、その漫画のことを思い出しました。
改めて読んでみると確かに突っ込みどころの多い内容であることが理解できます。
今回は、今更ですが厚生労働省が公開している「世代間格差の正体 ~若者って本当にそんなの?~」という漫画の内容について突っ込んでみたいと思います。
漫画のあらすじ
この漫画には母親と、2人の姉妹と思われる家族が登場します。
そして姉(地方公務員)が仕事から帰宅したときに、「若い世代の年金は損だと聞かされた」と愚痴るところから始まります。
姉が冷蔵庫を開けると中には年金お姉さん(おそらく厚生労働省職員)が隠れていて「世代間格差はポイントを整理して考えないとダメですよ!」と指摘するところから年金に関する話が展開されていきます。
まず年金という全国民にとって重要なことに関する漫画なのにこのシーンは必要だったんでしょうか?(そもそも漫画で解説するのもおかしいですけどね)
まあそれは置いておいて、この年金お姉さんが母親と姉妹に「若者は将来もらえる年金は少なくなるが、金額で損しても世代間格差はない」という滅茶苦茶な理論を展開して家族を丸め込むストーリーとなっています。
漫画の内容に突っ込む!
まずは下記リンク先の漫画を一読してどんな漫画なのか内容を見て頂きたいと思います。(2~3分で読めますよ)
読んだ方はすでにどこから突っ込んでいいのか困っているかもしれませんが、順番に内容に突っ込んでいきますね。
世代間格差は年金だけで考えて済む話ではありません!
このページでは今の現役世代が将来もらえる年金の給付額が減っていくことを認めていますね。
絶望的な少子高齢化によりそれが避けられないということは国も認めているのでしょう。
しかし、「世代間格差は年金だけで済む話ではありません」「生活環境で考えてみましょうか」と年金の給付額が減って損することから論点を変えようとしているようです。
昔は自分たちの親を扶養していたから大変だった!
確かに年金制度が不十分な時代には子供が親を扶養していたケースが多かったようです。
しかし、日本が貧しかった時代の一般家庭は今より圧倒的に子だくさんの場合が多く、子供が親を扶養するとしても子供一人当たりの負担額は今よりはるかに少なくて済んだはずです。
少子化の時代に育った若者とは比較にもなりません。
このページでは、昔は大変で今は恵まれているということを強調したいようです。
受け取る年金に差があったとしても損とは言えない!
昔の人が発展させた日本で育ったのだから、受け取る額に差があったもしても損ではないと言いたいようです。
たしかに昔が今よりも貧しくて物がなかったことは認めます。
しかし、なぜ将来年金給付額が少なくなることが、現代の生活が豊かになった(最近はむしろ貧しくなってますが)ことでトレードオフになると思ってるんでしょうか?
それに昔は物がなく教育も十分ではなかったかもしれませんが、その分必要な生活費も今より圧倒的に少なくて済みました。
しかし、物やサービスにあふれた現代では人並みの生活をするだけでもそれなりのコストがかかります。また、幸福度は相対的なものですから人並みの生活をしていないと不幸だと感じてしまうことも多いです。
貧しい時代を経験していないんだから年金給付額が減ることに文句を言うなということでしょうか?
今の若者が高齢者になるころには今より寿命も延びて老後必要な金額はさらに増えていると思いますが、便利な時代に育ったんだから老後貧しくても我慢しろということですかね?
公的年金は保険!国民が安心して暮らせることに価値がある!
損得の問題じゃないんだから給付額に差があっても世代間格差はない!という開き直りにしか聞こえません。
そもそも得する損するではなく、老後の生活が年金で成り立たなくなることに問題があるんですけどね。
人口が増え続けていた時代に、これからも増えると思って今の年金制度を作ったんだから、成り立たなくなったとしても仕方ないでしょう?ということのようです。
そして金銭の損得ではなく「全ての国民が安心して暮らせる事に価値があるんです!」と言っていますが、支払う額がどんどん増えていって、もらえる額がどんどん減って、支給開始年齢が伸びていく年金でどうやって安心して暮らすんでしょうか?
その後、「年金制度がなかったら今のお年寄りはどうやって暮らしていけばいいと思いますか?」とも言っていますが、制度に無理があると気付いたら早い段階で公的年金の仕組みを改革するべきではなかったんでしょうか?
今は一人っ子の家庭も多くなったから親を扶養するのは大変!
あなたさっき、「年金制度が不十分な時代には子供が親を扶養していたから大変だったんだ!」って言いませんでしたか?いかにも子供が親を支えていた時代の方が大変だったんだ!というような言い方でしたよね?
だから現代の若者が将来受け取る年金の額が減ったとしても損とは言えない、とも言っていましたよね?
昔の方が大変だったと言っていたのに、今度は昔の方が兄弟が多くて扶養するのは楽だった、だから現代で親を扶養するのは大変でしょう?とでも言うんでしょうか?
結局言いたいのは現代の若者はどっちみち損するという事なんじゃないでしょうか?
少子高齢化が続けば仕方のないことですけどね・・
経済の規模が拡大すれば公的年金が増える可能性があることはわかりました。
しかしその後のんきにピザを食べながら、「少子高齢化が続けば仕方ない」と匙を投げるような発言をしています。
つまり年金給付額が減るのが嫌だったら死ぬほど働いて経済を発展させろということですね。結局制度改革じゃなくて国民に丸投げということのようです。
結局仕方ないで片付けるんですか・・
この状態がずっと続くかどうかは決まっていない!
続くに決まっていますよね?
以前出生数についての記事でも書きましたが、少母化による少子化がここ数年でますます深刻になっています。
そして人口の予測は非常に精度が高いで、この先日本の人口が増えることはありえず、今後も少子高齢化が加速するという政府の推計が出ています。
どんな要素をもって悲観的になるなと言っているのでしょうか?
あんたが沢山子供を産めばいいのよ!
年金お姉さんの発言ではありませんが、明らかにセクハラ発言ですね。
ここでの子供をたくさん産めばいいというのは国の願望なわけですが、どんどん貧しくなっている日本で誰が子供をたくさん産みたいと思うんでしょうか?
現代が安心して子供を産み育てられる社会であると言えるんでしょうか?
日本はどんどん貧しくなっているのになぜ若者が損ではないと言えるのか?
ここまで漫画の内容に突っ込ませていただきました。
漫画の内容をまとめると、現代の若者は豊かな時代に育ったんだから将来受け取る年金が少なくなったとしても損ではない、だから世代間格差はない!ということのようです。
確かに今年金をもらっている高齢者(特に後期高齢者)の方々は、貧しい時代から日本の経済を発展させ豊かな日本を作ってきた人たちなのでしょう。
しかし、現代の日本は間違いなく衰退に向かっており、国民の収入は減り続け、税金と物価だけは上がり続けています。
日本経済が世界を席巻していたのはもう30年くらい前のことで、今の若者たちはその時代の恩恵にあずかることなく冷や飯を食わされているのです。
つまり決して豊かとはいえない時代を生きている若者たちは、衰退していく日本で満足な給料ももらえず、高い税金を負わされ、老後にもらえる年金は減り続けるわけです。
それを、年金は金銭の損得の問題ではないのだから世代間格差はない!というのは開き直りにもほどがあるのではないでしょうか?
このまま将来の年金が不安だと未婚率はますます上昇するし、国外脱出する人も増えるでしょう。
開き直るのではなく、根本的な解決方法を模索するのが国の仕事ではないでしょうか?
漫画の内容に無理があることは国もわかっているはず・・
これ以上年金お姉さんを批判するのはかわいそうなのでやめておきますが・・
実際この漫画を作らせた厚生労働省はどう思っているのでしょうか?
本音は確かめようがないので断言はできませんが、この漫画の論理が滅茶苦茶であることについて、頭のいいエリート集団である国家公務員が気付いていないはずがありません。
つまり、年金お姉さん(厚生労働省)が言っている理屈に無理があるということは十分わかっているはずです。
なのに、なぜこれほどまでに世代間格差はないとごり押しをするのでしょうか?
国は政策の間違いを認めることはできない
国としても理論的に無理があることはわかってはいるはずですが、開き直るか言い訳するしかないのでしょう。
もし国が、年金は実質破綻しているor将来破綻するということがわかっていたとしても、それを認めることはできません。
なぜならそれは今までの年金の仕組みづくりや年金に関する政策が間違っていたと認めることになるからです。
もし国が「ごめんなさい、今の年金制度には無理がありました!」と認めて謝罪してしまったらどうなるでしょうか?
国民は怒り狂い、下手をすると暴動に発展する可能性もありますよね?もちろん年金を絶対に払わないという人が多数出てくるでしょう。子供を持とうとする人も減りますね。
そうなると国民年金はますます成り立たなくなってしまいますし、社会が不安定になることさえ考えられます。
つまり、国としては政策が明らかな悪手だっとしても、重要な政策であればあるほどそのミスを認めることはできないのです。
これは国民年金に限らずあらゆる政策についても同じことが言えます。
【本音】年金制度に無理があるのはわかってるからこれ以上責めないで!
年金に代わる制度は今のところない
年金制度が成り立たなくなってきていることはわかりましたが、では国民年金に替わる制度はあるのでしょうか?
以前紹介したように、ベーシックインカムという制度が考えられますが、今のところ議論だけで前向きに導入を考えているわけではなさそうです。
また、年金を積立式に替えようとしても、現在積み立てたお金がインフレにより将来受け取る頃には価値が相対的に下がっていることも考えられるので合理的ではありません。
このことについては厚生労働省も同様の見解を示しています。
破綻はしないがもらえる額は減り支給開始年齢は上がる
他に替わる制度がなく、すでに運用が苦しい国民年金は若者が将来高齢者になるころには破綻しているのでしょうか?
破綻をどう定義するかにもよりますが、1円も受け取れなくなるということを破綻とするなら、おそらく破綻はしていないと思われます。
ただし、現在の受け取り開始年齢である65歳という年齢はかなり引き上げられている可能性が高いです。
また、受け取る額についても現在よりかなり少なくなることは間違いないでしょう。
年金制度は現役世代が高齢者を支える賦課方式ですから、少子高齢化が進めば確かに仕方ないですね。
つまり、破綻はしないが年金だけで老後生きていくことは事実上不可能になるということです。(現在もすでにそうなりかけていますが)
結局は”実質”破綻かよ!
【結論】自助努力しましょう!
2019年に話題になった老後2000万円問題でも明らかなように、若いうちから老後の生活を見越し資産運用するなどして自助努力をしましょう!ということですね。
自己防衛おじさんは正しかったというわけです。
そんなわけで、どれだけ漫画でごまかそうが、年金の世代間格差が拡大し、今の現役世代の生活は年金だけでは成り立たなくなることがお分かりいただけたと思います。
今働いている人たちは、今のうちにしっかりと貯蓄や投資をしたり、思い切って海外移住を計画するなりして自己防衛するようにしましょう!
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