出生数90万人割れで日本の未来はどうなる?

昨年末、 2019年の出生数が政府の予想より2年早く90万人を割ることが確実なったという衝撃的なニュースが話題になりました。

2016年に100万を割ったことは記憶に新しい出来事ですが、それからわずか3年10万人以上出生数が減ったことになります。

また、日本の人口についても、超高齢化社会を迎え亡くなる方の数が増え続けていることも加わり、2019年は50万人超の人口減となりました。

いよいよ本格的な人口減少社会に突入したことを実感させられます。

国家そのものの衰退の原因となる少子化ですが、はたしてこれからの日本にどのような影響を与えるのでしょうか?

出生数の推移

昨年90万人割れした出生数ですが、現在まで日本の出生数はどのように推移してきたのでしょうか?

出典:内閣府 出生数・出生率の推移

1970年代前半には第二次ベビーブームがあり、団塊ジュニアと呼ばれた世代による第三次ベビーブームが起きるのではないかと期待されていましたが、残念ながらそれも幻に終わってしまいました。

近年の推移をみると、出生数は減る一方であることがわかりますね。

少子化の原因

ここまで少子化が進んでいる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

出生率が減少した

1970年代には2.0を上回っていた出生率ですが、その後、2005年に1.26で底打ちするまで減少し続けています。

最近は1.4以上まで回復してはいますが、2.0を下回った時点で、日本の人口がいずれ減少に転じることが確定してしまいます。

出生率が減少するということは、将来子供を産んでくれる母親となる女性の数が減っていくということなのです。

結婚する人が減った

結婚する人の割合が減ったことも少子化に大きく関係しています。

こちらのグラフは50歳までに一度も結婚した事がない人の割合(生涯未婚率)の推移を表したものです。

出典:厚生労働省 生涯未婚率の推移

近年は右肩上がりで上昇が続いており、特に男性では2015年の時点で4人に1人が生涯結婚しないと言ってよい割合になっています。

さらに今後も未婚率は上昇し続けていくと予測されています。

日本では婚外子の割合が極端に少ないので、基本的には結婚しなければ子供も産まれないことになります。

つまり、未婚率の上昇は出生数の減少にダイレクトに影響を与えているのです。

未婚率が上昇している原因としては、以下のような理由が考えられます。

  • 格差社会の拡大
  • 価値観の多様化

格差社会の拡大

格差社会の拡大により、生活に十分な収入を得られない人が増えたことが国民の所得推移から指摘されています。

経済的な不安は、パートナーを養っていけない結婚するための資金を準備できないなど、結婚への意欲を失わせる原因になります。

しかし、結婚適齢期の男女へのアンケートでは、今すぐ結婚したいいずれは結婚したい、と回答している人が多数であり、決してみんなが結婚したくないというわけではないのです。

極端な経済格差は、少子化という形でも社会へマイナス影響を与えることになると言えそうです。

価値観の多様化

ひと昔前までは、「男は家庭を持って一人前」「女は子供を産んで一人前」という考えが一般的でした。

現在もこのような考え方の人は一定数いますが、最近では価値観の多様化から、「結婚しないことは個人の自由である」という考え方が受け入れられつつあります。

価値観の多様化により、人はより自由に生きられるようにはなりましたが、世間体を気にしなくてもよくなったことで、未婚率の上昇というマイナス面が表面化しています。

団塊ジュニア世代によるベビーブームが起きなかった。

短期的な話にはなりますが、出生数の推移でもご紹介したように、1970年代前半には第二次ベビーブームが起きました。

彼らは団塊ジュニアと呼ばれる世代で、第一次ベビーブーム世代が出産適齢期の間に産んだ世代です。

このベビーブームの連鎖から、政府は団塊ジュニア世代による3回目のベビーブームを期待していましたが、その予想は大きく外れました。

そして、近年の出生数の急激な減少は、この団塊ジュニア世代が40代後半を迎え、出産適齢期を過ぎたことも原因であると言われています。

一時的ではありますが、人口ボーナスのチャンスを逃してしまったわけですね。

少子化が社会に与える影響

では、少子化は社会にどのような影響を与えるのでしょうか?

プラス面とマイナス面の両方を見ていきましょう。

人手不足による経済の縮小

日本は人口減少により空前の人手不足となっており、介護飲食業界などで人手が全く足りていない状況が続いています。

2019年には人手不足による倒産件数過去最大になったというニュースもありました。

当然このまま少子化が進行すれば、人手を必要とする企業の経営が成り立たず、様々な産業が大きな打撃を受けることになります。

そして、少子化はサービスや物を消費してくれる消費者が減少することとイコールでもあります。

つまり、人口が減るということは、生産者の減少納税者の減少消費者の減少など複数のマイナス影響を社会に与えることになるのです。

子供や労働者が大事にされるようになる

プラスの面についてもご紹介しましょう。

自治体などでは、何とか子育てしやすい環境を整えようと、子育て世代への様々な対策を行っています。

各種手当、医療費無料などは当たり前で、レジャー施設でも未就学児は無料としている企業もあります。

子育てする親にとって、少なくとも経済面では、子供が大事にされる社会になってきているといえるでしょう。

また、少子化で労働力が不足すれば、企業も労働者を確保するために好待遇を用意したり、福利厚生を充実させて人を集めざるを得なくなるはずです。

日本では”ブラック企業”で低賃金の過重労働を強いられ、過労死に至る事故が毎年のように報道されていますが、人手不足となれば労働者が働く企業を選べる立場になるので、労働者を大事にしない企業は淘汰されるようになるでしょう。

・・とはいえ、基本的に少子化が社会に与える影響はマイナスの面が圧倒的に多いと言えます。

出生率は回復してきている

人口減少の原因を見ると、出生率の減少によって産まれる子供が減り、それによって子供を産む母親の数が減ってさらに人口が減る。という負の連鎖があることがわかりました。

出生数と出生率の推移をもう一度見てみましょう。

出典:厚生労働省 生涯未婚率の推移

出生率が1970年代から2005年にかけて減少し続けているのがわかりますね。

しかし、2005年から最近にかけては1.4以上に回復しています。

つまり、子供を産む日本のお母さんたちは頑張ってくれていると言えます。

それでも今までの大きな流れを変えることはとても難しく、たとえ出生率が2.0以上になったとしても、出生数の減少は避けられないのです。

対策はあるのか?

ここまで少子化の原因や影響についてご紹介しました。

では、急速に進む日本の少子化を食い止める方法はあるのでしょうか?

少子化対策&少子化した社会への対策について考えてみました。

結婚したい人、子育て世代への支援

日本では婚外子の割合が極端に少なくなっています。

つまり、結婚する人の数が、出生数に大きな影響を与えることになってしまうのです。

近年日本では未婚率が右肩上がりで上昇しており、その原因として”価値観の多様化”もありますが、結婚願望があっても経済的不安などの理由で結婚できない人がいることが大きな原因になっているのです。

特に近年、結婚適齢期である若年層(15歳~34歳)の収入が減少しているため、彼らが結婚することに躊躇しないだけの賃金を与える必要があります。

そのためには、日本ではまだ根強い年功序列賃金を辞め、年齢に関わらず成果に対して十分な賃金を支払うこと。

また、長時間労働を是正し、男女ともプライベートを充実しやすい環境を整えることが重要です。

そして子育て世代に対して行政・民間が一丸となってサポートすることにより、将来子供を持つことへの意欲を高めることができるのです。

AIなどテクノロジーの活用

少子化した社会への対策として、深刻な人手不足を解消するためには、AIなどのテクノロジーをフル活用する必要があります。

例えば、自動運転車による配送サービスや、無人店舗、事務作業でのRPAの使用など、AIやロボットにも可能な仕事は可能な限り自動化していきます。

逆に人間がやらなければならないクリエイティブな仕事や、介護などコミュニケーションが重要な仕事に人手を多く回して、その職業の賃金を上げるようにすれば良いのです。

もしテクノロジーを活用できなければ、日本は人口減少により生産活動が縮小し、衰退の加速は避けられないでしょう。

少子化・人口減少は止められない

少子化対策と少子化社会への対策を一緒にご紹介しましたが、現時点ですでに少子化・人口減少を止めることは現実的に不可能な時期に達してしまいました。

過度な少子高齢化により、将来子供を持つことになる若年世代の人口が激減しているからです。

これからの日本にできることは、人口減少スピードをなるべく抑える人口が少なくてもやっていける社会を作ること、になります。

日本以外の先進国も将来的には深刻な少子高齢化社会に突入すると言われていますが、その先頭を走っている日本がどのようにこの社会問題を乗り越えるのか、世界中が注目しています。

まとめ

いかがだったでしょうか?

最近日本の将来に関する悲観的な予測が多くなってきていると感じられます。

しかし、未来はまだ確定しておらず、現在の私たち一人ひとりの行動によって決まるのです。

世界でも類を見ない超少子高齢化という問題から目を背けずに向き合っていきたいですね。