2020年春からいよいよ日本でも5Gの本格的なサービスが開始されます。
既にNTTドコモは今年の9月20日から5Gのプレサービスを開始しました。
5Gとは現行の移動体通信規格である4Gの次世代通信規格です。
ニュース等で数年前から話題になっていますが、5Gへの進化は今までの通信規格の世代交代より大きな変化をもたらすと考えられます。
この記事では、来年から始まる5Gは何がすごいのか。私たちの生活にどのような影響を与えるのかをご紹介します。
5Gとは何か?
5Gは”5Generation”の略で、その名の通り”第5世代”を表します。
通信規格においては”第5世代移動通信システム”のことを指し、スマートフォン等の移動通信機器が使用する第5世代目の通信規格を表します。
1G~4Gはどんな通信規格?
5Gの特徴を知る前に、1G~4Gがどんな規格なのか見ていきましょう。
1G~4Gについてざっくり説明すると・・・
1G・・・通話ができる
2G・・・メールができる
3G・・・重い画像が送受信できる
4G・・・動画がサクサク見れる
1G
1980年代に開始された通信規格で、アナログ式の携帯電話、車載電話を使用して移動しながら通話ができるようになりました。アナログ通信なのでデータの送受信はできず通話のみ可能なサービスでした。
2G
1990年代前半に開始された通信規格で、通信がデジタル化され、メールが送受信できるようになりました。また、制約は多いものの簡易的なWebサイトの閲覧が可能になりました。(NTTドコモのiモード等)
3G
2001年にNTTドコモが最初に運用開始した通信規格で、下りの最大通信速度は14Mbps。ある程度重い画像でも送受信できるようになったためWebサイトも快適に閲覧できるようになりました。しかし、高画質の動画を見るには速度が足りないことも多いようです。
4G
携帯キャリア各社により違いはありますが、NTTドコモは第3.9世代のLTEを経て2015年に本格的にサービスを開始。現在も進化を続けており、下りの最大通信速度は1038Mbpsにも及びます。 4Gの実用化により、外出先で映画を高画質で楽しむということも可能になりました。
5Gの特徴
次はいよいよ5Gの特徴を見ていきます。
5Gの特徴は主に以下の3つです。
- 超高速通信(下り最大10Gbpsの通信速度)
- 超低遅延(基地局からの遅延が1ミリ秒以下)
- 同時多数接続(1平方㎞で100万台が同時接続可能)
超高速通信
5Gの下り最大速度は最大で10Gbps(変換すると1.25GB)。2時間の映画をDVD1枚分の4.7GBと仮定すると、4秒未満でダウンロードできる計算になります。これはあくまで理論値になりますが、4Gと比較していかに高速かわかりますね。また、5Gは導入後も発展を続けていき、将来的には20Gbpsにまで到達する予定となっています。これだけの情報量を送ることができるのは、28GHz帯という高い周波数の電波を使用しているから。周波数が高くなれば送れる情報量は多くなりますが、遠くまで送りにくいという特徴があります。そのため5G基地局アンテナでは、電波を任意の方向に長く飛ばすなどの技術が使用されています。
超低遅延
これまでの通信では、遅延の発生が長年の課題になっていました。4Gでも数十ミリ秒の遅延がありますが、5Gではなんと1ミリ秒以下まで遅延を減らすことができるんです。1ミリ秒は1/1000秒なので、人間には知覚できないといっても良いでしょう。これだけ高速だと、ほぼリアルタイムで世界中と繋がることができますね。
同時多数接続
5Gでは1つの基地局で2000台の機器が同時に接続できるようになっています。1平方㎞では、100万台もの通信機器が同時に5G通信を使用できることになります。5Gはこれから本格的に始まる IoT(物のインターネット)で活用することも考慮されており、工場の設備や各家庭の家電、自動車など、あらゆる物がインターネットに繋がるIoT時代には必須のスペックとなります。
5Gの活用方法
5Gが今までの通信規格と比べてどれだけすごいのかおわかり頂けたと思います。
でも、そんなに通信速度が速くなってどうするの?
今でも十分速いんじゃない?と思うかもしれません。
確かにスマホで動画を見るだけならそれほどメリットはないかもしれませんが、
5Gをフルに活用すれば、今まで難しかった様々なことができるようになるんです!
具体的にどのような活用が想定されているのか見ていきましょう。
自動運転
自動運転については下記の記事で詳しく解説しています。
自動運転タクシー等の情報をデータセンターで一括管理する場合、遅延時間は致命的な遅れになります。自動車は時速40㎞なら1秒で11m、時速100㎞なら28m進むことになるので、例えば自動運転車から死角になっている場所から歩行者が飛び出すことを街や他車に設置されたセンサーが検知できても、緊急停止信号を受信するまでに間に合わない可能性もあります。また、自動運転車同士がリアルタイムで通信していれば、ブレーキをかける際の情報を送ることができるので、必要最低限の車間距離を保てばよくなります。これにより現在よりも渋滞が緩和されるなどのメリットが考えられます。
遠隔医療
5Gの技術は医療でも大きな力を発揮すると予想されています。現状、都会と田舎では医療のレベルに格差があると言われています。また、病院に十分な設備があったとしても、優れた手術のスキルを持っている名医の数は限られているため、遠方に住む人が手術を受けようとするとどうしても距離がネックになってしまいます。しかし、”ダヴィンチ”のような手術用ロボットを5G通信で遠隔操作すれば、世界中どこにいようと名医の手術を受けることができるのです。超低遅延技術により、外科医は自分とロボットの動きにタイムラグをほとんど感じることなく手術に集中できるでしょう。
農業
一見通信技術と関係ないと思われる農業ですが、この分野にも大きな影響を与えると思われます。自動運転トラクターや農薬散布用のドローン、気象予報データが連携して行われる”スマート農業”では、膨大な情報量が瞬時にやり取り、処理されるため5Gが持つスペックを必要とします。地方では人口減少により農業の担い手が不足していることが問題になっていますが、5Gとロボティクスを組み合わせた大規模スマート農業が普及すれば、今より人手をかけずに多くの収穫を得られるようになるでしょう。
リモートワーク
実際に私がリモートワークをやってみた感想は以下の記事にまとめてあります。
近年、働き方改革の一環として自宅にいながら仕事をするリモートワークを導入する企業が増えています。会社に出勤する必要のない日に自宅で働くことにより、通勤時間をなくすことができるメリットがあります。一方でリモートワーク経験者からは、Web会議等では相手の顔が見えないため細かいニュアンスが伝わらなかったり、職場の雰囲気がわからないのでもどかしいといった声も上がっています。5Gを活用すれば、安定して遅延なくWeb会議を行うことができますし、職場にWebカメラを設置してVRのようなデバイスで職場の雰囲気をリアルタイムで見ることができれば、よりスムーズにリモートワークが行えるようになるでしょう。
世界を変えるほどの衝撃!
”5Gの活用方法”で紹介した事例はごく一部であり、IoT、AI(人工知能)、物流、教育、そのほかにも今後まだまだ新しい活用方法が出てくると思われます。
5Gの登場により、私たちの生活をより便利なものに変えるテクノロジーが、十分な力を発揮できる環境が整うことになると言えます。
来年から始まる5G通信により、2020年代はいよいよSFのような近未来的生活が幕を開ける可能性があるのです。
5Gが持つ可能性をフル活用したとき、まさに世界を変えるほどの衝撃を私たちに与えるでしょう。
とはいえ、5G基地局アンテナは4Gと比較すると電波の届く距離が短くなってしまうため、どうしても基地局を多数設置する必要があり、数年をかけて普及していくと思われます。
まずは人口が集中している都市部を中心として徐々にエリア拡大していくとみられています。
5Gには課題も残されている。
ここまで良い面ばかりを紹介してきましたが、もちろん5Gにも多くの課題が残されています。
その中から特に問題視されている課題を見ていきましょう。
健康被害
基地局から発信される電波が、生物に悪影響を与えるのではないかという研究結果が世界の医療機関から報告されています。また、4Gよりも基地局の設置間隔が短くなるため、私たちが体に受ける電磁波の量自体も大幅に増えるとことになるため、少なくとも体に良い影響はないと言えるでしょう。ベルギーでは安全性が証明されるまで5Gの導入を見送ることを決定。ヨーロッパ各国からも、健康被害を懸念する声が上がっています。5Gの利便性は大変魅力的ではありますが、健康面への影響も十分に検証していく必要があります。
基地局の設置数
5Gで使用する電波は届く距離が短いため、数百メートル間隔で基地局を設置しなければなりません。そのため、どこに基地局を設置するのか?基地局整備に要する膨大なコストを回収できるのか?等が課題となっています。携帯キャリアでは、整備コストの負担を軽減するために一部基地局をシェアする議論が進んでいます。
まとめ
5Gの特徴は、
- 超高速通信
- 超低遅延
- 同時多数接続
サービス開始後も発展を続けていき、将来的には通信速度下り20Gbpsに達する見込み。
5Gの活用方法としては、
- 自動運転
- 遠隔医療
- スマート農業
- リモートワーク
などが考えられており、その他にも様々な活用方法が想定されている。
今後の課題として、
- 健康被害についての十分な検証
- 膨大な基地局数の整備コスト
などがある。
いよいよ始まる5G通信サービス。まだ存在していない画期的な活用方法を思いつくことができれば、大きなビジネスチャンスを掴めるかもしれませんね!
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