【ブレークスルー連発】次世代のパワー半導体材料4選!

お疲れ様です!

最近「半導体不足で車が作れない!」など半導体という言葉をニュースなどでよく耳にします。

半導体は車だけでなく、もはやどの産業にとっても必要不可欠で、「産業のコメ」などと呼ばれる重要なデバイスになりました。

その中でも、近年材料関係でブレークスルーが相次いで起こっているのが「パワー半導体」です!

パワー半導体とは何をするデバイスで、どんな新材料が生まれているのか?ご紹介したいと思います。

そもそも半導体とは?

半導体というとほとんどの人は漠然としたイメージしかないと思いますが、半導体は電子材料としての意味で言うと”電気を通したり通さなかったりする物質”のことです。

今最も多く使われている半導体の材料と言えば「シリコン(ケイ素、Si)」になります。

シリコンは、温度条件や結晶中に含まれる不純物の影響で電気を通したり通さなかったりするので、導体と絶縁体の両方の性質を持っている物質です。(だから半導体と言うんですね)

一方で、電子部品としての半導体と言うとメモリーやCPU、発光ダイオードなどが代表的なもので、半導体の電気的な特性を利用して動作するデバイスです。

半導体は、電気を通したり通さなかったりする性質を利用して、記憶したり演算したり、光を放ったり様々な機能を持たせることができるとても便利な部品なんです!

電子材料としての半導体 ⇒シリコンなど導体と絶縁体両方の性質を持った物質

電子部品としての半導体 ⇒メモリー、CPUなど半導体材料の電気的性質を利用した部品

ニュースなどで言っている半導体とは通常この「電子部品としての半導体」のことを指します。

パワー半導体とは?

半導体は電気を通したり通さなかったりする物質の特性を利用した電子部品だと説明しましたね。

その中でも今回紹介する「パワー半導体」とは、半導体の電気的特性を利用して「電力を調整するための半導体」のことです。

「電力を調整する」パワー半導体は主に以下のような役割を持っています。

  • 電圧の調整・・供給された電力の電圧をその機器の最適な電圧に昇圧・降圧する。
  • 周波数の変換・・供給された電力の周波数をそのデバイスの最適な周波数に変える。
  • 交流↔直流電源の変換・・交流電源(日本の場合50Hz・60Hz)を電化製品などで使用可能な直流電源に変える。もしくはその逆を行う。

つまり、演算したり記憶するための半導体ではなく、電力を調整することに特化した半導体ということです。

パワー半導体に求められる性能

パワー半導体に求められる性能は時代が進むごとに厳しくなってきています。

現在最も普及したパワー半導体はメイン材料としてシリコンが使われており、構造などを改善しながら少しずつ進化してきました。

では、パワー半導体にはどんな性能が求められているんでしょうか?

どれだけ高電圧に耐えられるか?

パワー半導体は電力を制御する部品なので、高い電圧に耐えられなければ意味がありません。

電車やEVのように強力なモーターを駆動するために大電流を扱う製品では、高電圧に耐えられるようにパワー半導体を大型化したり、複数個搭載する必要があります。

現在のシリコンメインのパワー半導体よりも高電圧に耐えられる半導体材料があれば、小型化も可能になりますし、パワー半導体デバイス1個で全ての電力を調整できるようになります。

どれだけ電力ロスが少ないか?(変換効率)

パワー半導体は電力を調整するための半導体ですが、シリコンを使った半導体では調整(変換)するほどに電力がロスしていきます。

ロスした電力は熱になって半導体の加熱の原因になってしまうため、いかに効率よく電力を調整できるかがパワー半導体の肝になります。

シリコンをメインに使ったパワー半導体では少しずつ改善を続けながら電力変換効率を上げてきましたが、すでに材料としての限界に達しつつあることが問題となっています。

つまり、これ以上高性能化するならシリコンに変わる材料を探す必要があるというわけですね。

どれだけ高温に耐えられるか?

パワー半導体は高電圧の電流を流すとどうしても発熱しますし、使用環境自体が高温になる場合もあるので、どれだけ高温でも動作できるかが重要な特性になります。

そして温度が高いとパワー半導体としての制御精度が落ちるので、温度に影響されにくい電気的特性を持った材料が向いています。(バンドギャップという数値で表されます)

また熱伝導率も非常に重要で、すぐに放熱してくれる材料の方がパワー半導体に向いているというわけです。

現在パワー半導体が搭載されている製品には、電子部品が高温にならないようにファンやヒートシンクなど何らかの冷却機構がついていますが、高温でも問題なく動作できるパワー半導体であれば冷却機構を小型化することができます。

シリコンの後継が期待される新材料

シリコン(Si)の後継となる次世代パワー半導体の材料にはどのようなものがあるんでしょうか?

実用・製品化が既に始まっているものも含めてパワー半導体のブレークスルーが期待される新材料を4つご紹介します。

SiC(シリコンカーバイド)

既に実用化し、普及し始める段階に入っている有望な材料の一つがSiC(シリコンカーバイド)です。

下はSiを含む新しいパワー半導体材料の電気的特性を示した表です。

ワイドバンドギャップ半導体とはより引用

どれだけ高電圧に耐えられるか、電力のロスが少ないかに関わる絶縁破壊電界強度は、SiC系の材料ではどれもSi単体の約10倍ありますね!

熱伝導率Siの3倍以上あるので、Siよりも速やかに放熱され高温になりにくいという面でも有利です。

バンドギャップはどれだけ高温でも動作できるかに関わる数値ですが、こちらもSiの2~3倍程度になっています。

SiCは実際に電車用パワー半導体などが製品として実用化されており、従来のSiパワー半導体に比べて省エネルギー化に成功している製品が数多く登場しているようです!

材料資源は豊富ですが、まだまだ製造コストが高いのが難点で、今後の製造技術の発展とコストダウンに期待したいところです。

GaN(ガリウムナイトライド)

ガリウムと窒素の化合物であるGaN(ガリウムナイトライド)もSiCと並んで実用化が進んで来ている新材料の一つです。

Siと比べて優れているのはもちろんのこと、バンドギャップや絶縁破壊電界強度はSiC系材料を上回るくらい電気的特性が優れている材料です。

半導体デバイスとして使用した場合の特性はSiCとは若干異なるので、用途やかけられるコストによってSiCとGaNを使い分けるのが重要だと思います。

Ga2O3(酸化ガリウム)

Ga系材料でGaNよりもさらに優れた特性を持っていると期待されているのがGa2O3(酸化ガリウム)です。

上の表には載っていませんが、酸化ガリウムのバンドギャップは4.5~4.9ev、絶縁破壊電界強度はGaNの2倍以上の8MV/cmにもなります。

日本の会社だとタムラ製作所がウェハー製造技術で先行しており、すでに100mmサイズのウェハー販売を開始できる状態のようですね。

特注ではなく、量産されている半導体製造装置との相性も良く次世代パワー半導体材料として特に期待されている材料です。

ダイヤモンド

ダイヤモンドは宝石の代表格として有名ですが、実はパワー半導体材料としても注目されており、ダイヤモンド半導体は究極の半導体とも言われています!

ダイヤモンドの電気的特性はバンドギャップ、絶縁破壊電界強度、熱伝導率などで他の材料から性能が頭一つ飛び出ている感じです!

もちろん天然のダイヤモンドを加工して半導体にすることはできないので、人工ダイヤモンドをパワー半導体として使おうという取り組みが行われています。

製品化するためにはある程度大きな結晶を作りウェハー化しなければいけませんが、大きなダイヤモンド結晶を作るのは非常に困難でした。

しかし、アダマンド並木精密宝石は2021年ついに1インチ(25mm)のウェハーを作ることに成功しました!

これによって既存の半導体製造装置でなんとか加工できる大きさになりました!

また、佐賀大学ダイヤモンド半導体の効率的な動作構造を発明し発表しました!

この2つのブレークスルーによって、今後ダイヤモンドを使った超高耐久、超低損失のパワー半導体が実用化するスピードはますます加速していくと思います!

まとめ

今回は次世代のパワー半導体材料についてご紹介してみました。

半導体と言うとすごく難しいイメージがありますが、どんな電化製品にでも半導体は使われていて私たちの生活を支えている身近なものです。

今後次世代のパワー半導体材料が実用化されてEVの航続距離が伸びたり、電化製品の消費電力が減ったりいろいろな恩恵を受けることが期待されます。

そんなすごい影響力を持ったパワー半導体の発展に今後も注目していきたいと思います!